ながいことアルバム作り支援をしてきたカオルPです。
アルバムを作るということは「写真データを形にする」と言い換える事もできます。簡単に言えば「プリントする」ですね。
今は「書類をデジタル化する」もしくは「プリントせず電子書類のまま業務を進める」という事も叫ばれています。確定申告や書籍も電子化してきています。必ずしも紙である必要がないのです。
そんな時代、写真をプリントしたりアルバムにすることは時代に逆行していると感じるかもしれません。
本記事は「アルバムは良いというけれど必要性を感じない。本当に作る意味があるのかしら?」と、モヤモヤしている方向けの内容です。
楽しい思い出は忘れがち?だからこそのアルバム
写真が紙である物理的メリット
1)触る事ができる・捨てることができる
2)見るための機械的アクションが不要
記録として未来に残せるかもしれない
楽しい思い出は忘れがち?だからこそのアルバム
アルバムを作る大きなメリットは「忘れない」ということです。良い思い出を沢山持っていることは間違いなくその人の力になります。
アルバムを作る工程は
- 写真を撮る
- 写真を選ぶ
- レイアウトする
- 見返す
なかなかの手順です。要は「編集作業」です。
これはそれなりに時間がかかる工程です。その時間の間、写真を見返しているので思い出を記憶しやすいのは間違いありません。
「チコちゃんに叱られる!」という人気番組の中で人は楽しい思い出はふわっとしか覚えておらず
嫌なことほど覚えている、といったことを紹介していました。
楽しいことはざっくりとしか覚えていないけど嫌なことははっきりと覚えている。一体なぜ?
▽ビーチサンダルの謎▽嫌なことの記憶▽天井の模様
これは、悲劇を繰り返さないように、失敗や危険、嫌な思い出を強く記憶するからだとか。
逆に楽しいことはざっくりと記憶するんだそう。
確かに「楽しかったこと」って「楽しかった」ということは覚えている。でも詳細はふんわりしていますよね。これってもったいないことだと思いませんか?
強烈に残っている嫌な記憶の方が強くて、楽しいことの記憶が負けたりするかも!?若い頃の黒歴史やトラウマが鮮烈で自分に否定的になっている人は、もしかしたら、沢山あった良いことを忘れてしまっているのかもしれません。
だからこそ、楽しい記憶は自分のためにもっと楽しんだ方が良いかもしれません。
そのためにはアルバム作りはとても良い手段だと思います。
写真が紙である物理的メリット
もちろん、写真データを紙にすると物理的にも良い点があります。
- 触る事ができる・捨てることができる
- 見るための機械的アクションが不要。
- 捨てる事ができる。
当たり前のことなのですが、これらは意外に良い点があるのです。
1)触る事ができる・捨てることができる
紙なら触る事が出来て、捨てることができる。これはコミュニケーションツールとして役に立ちます。
「紙」はコミュニケーションツール
カオルPは印刷物を作る仕事(グラフィックデザイナー)をしていた時期があります。チラシや雑誌など基本的に「捨てられてしまうもの」を作っていました。
そう考えると「作っていて切ない?」でしょうか。いえ、そんなことはないんです。
例えば製品チラシなら、その製品を「紹介したい人」と「検討している人」の橋渡しができる。そこに価値があるわけです。チラシはその役目を果たせるかどうかが最重要です。
今なら「web広告でも十分じゃない?」となるかもしれません。確かに昔に比べてチラシは減ったかもしれませんね。
ですが、webと紙には決定的な違いがあります。
webやTV広告は流れていってしまうということです。そこに留(とど)まってはくれません。紙ならば渡された瞬間に目に飛び込みそこに「存在し続ける」ことができるんです。
捨てる事ができる
そして「捨てる事ができる」。
これは唐突でしたか?「データだって削除できるじゃないか?!と」思いましたよね。
ここで言う「捨てる」は気持ちの整理をつけやすいという意味です。
写真を捨てることが得意の方は少ないと思います。「きっと大事なモノであろう写真」を捨てるのには抵抗がありますよね。
でも「昔つきあった恋人の写真を捨てた!」これ、経験あるんじゃないでしょうか?
「もう関わりたくなーい」って人がいれば、その名前を書いて燃やすといい!なんて話を聞いたこともあります。
思い出も、時とともに変化します。その時は良くても、自分にとって辛い思い出になるとか、ネガティブな気分になるものもあるかもしれません。そんな時は捨てても良いと思いますよ。
気持ちがスッキリするかもしれません!
2)見るための機械的アクションが不要
そして紙であれば、そこにある像を見るための機械的アクションは要りません。
データの場合は、まずデータを入れるための入れ物が必要です。データが厄介なのはその入れ物の中身を見るために、何か別の機械を通さないといけないということですね。
USBメモリもSDカードもCDもそうですよね。何かしら再生する機器が必要です。スマホに入っているデータはスマホがあるから中身が見えるのです。
電子データですから、それを見るためには電気も必要なのはご存知の通りですね。
機械も電気もあれば問題ないんだから良いじゃない?!
でも、電気や機械がなければ写真は無いに等しいのです。
写真を画面で共有するのは手間も少なく、忙しい現代人にはしっくりくる方法です。「(紙の)アルバムを作る人」はほとんどいなくなるかもしれません。
ただ、そこにかけた時間で得られるものはやった人にしか分からない、得難い価値はあるでしょう。
忙しい現代人が「アルバムを作る」というハードルを超えるためには、写真を愛しむ時間の余裕をもつ事が大事なのだと思います。
記録として未来に残せるかもしれない
SDGsが叫ばれる今、私たちが住んでいる地球自体がどうなっていくのかは分かりません。
でもこれまで人は過去に学んできたはず。
それが書物であったり、住居の壁画であったり。記録があったからこそ紐解く事ができたのです。
記録がデータだけ!となると、それを後世に伝えることはもしかすると難しいかもしれない。
何故ならデータを守る事は、とても大変だからです。私たちが普段やっている「バックアップ」は、あくまで一時的なもの。これを未来に向けて長期的に守り続けるのが「アーカイブ」です。
参考記事:
「バックアップ」と「アーカイブ」の違いについて違いを理解し、効率的なデータ保管を
家族写真を「アーカイブ」しているという人には会った事がありません。
そこまでするのであればプリントする方が早いです。
そもそも「1個人の家族アルバムが歴史的資産になるなんて思えない」と思いますよね。
でももしかして、何かの理由で地球に大きな変化があった時。「古いアルバム」が未来の人の宝になるかもしれないですよ!
だからと言って、それがアルバムを作る理由になる!と言うには無理がありそうですが。
余談ですが、所ジョージさんが、世田谷ベースで面白いものを作っているのはご存知ですか?
「自分がアカデミー賞を取った」・・・かのようなポスターを作っていました。
そのポスターを見ると賞を辞退したことになっています(笑)。そのポスター、とても完成度が高いんです。「未来人を騙せるかもしれないでしょ」と楽しそうに言っていました。
面白い話だな、と思って妙に覚えています。
プリントするメリットについては、発行している「写真整理マガジン「写真のきもち」」でも触れています。
※実はこの記事を書いたきっかけは2019年の写真業界の展示会内のコピーです。「写真はプリントしてこそ価値がある」というコピー。妙な違和感を感じました。その言葉自体は間違えではないのですが、写真そのものの価値を伝え切れてないコピーのように感じたからです。
その後何度か改稿して本記事となっています。
(2019年6月24日公開記事。最終更新日2022年12月29日)